アドベンチャーゲームの入江

アドベンチャーゲーム(ADV)を600本以上持つ筆者が、商業ゲームプランナーの視点からADVを紹介するブログ。ギャルゲーからミステリまでADVならなんでも。

【Switch】病みギャルゲ『私だけいれば問題ないよね』レビュー。恋愛ADVはこういうのでいいんだよ!

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 2020年6月から Switch で配信されている『私だけいれば問題ないよね』は、選択によってヒロインが病んでしまうなんとも恐ろしいギャルゲーだ!

だがその恐ろしさと同居していたのは、「ギャルゲーってこういうのだよな!こういうのがやりたかったんだよ!」という高揚感!
「ほっほっほ...久しぶりですよ...ギャルゲーには慣れているはずの私がこんなに攻略に苦労させられるのは...」と言いたくなるくらい、ヒロイン毎にしっかりと個性がつけられている良作

今回はそんな『わたもん』のレビューをお届け。

 

 

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『わたもん』の基本

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 本作はまず、数人いるヒロインから誰のストーリーを始めるかを選ぶ。そして展開されるのが、画像のようなメッセージアプリ上のやりとり。トークに対して3択で返信し、彼女からの深愛度を高めていくのが基本になる。

この返信の機会がたくさんあり、「考える」ことが多いのでプレイしていて非常に楽しい。我々の普段のコミュニケーションは、どういう返答をするかを常に考えるもの。ゲームにおいてもそんなリアルさ...会話の「当たり前」をしっかり体験できるのはポイントが高い

但し、アプリでのやりとりが1対1である関係上、物語のメインのヒロイン以外はほとんど登場せず絡みも希薄ではある。グループチャットであっちを立てたらこっちが立たず、そして病んでいく...のも面白そうだが、それは他の作品に任せよう。でもとあるヒロインのルートでは病み同士の絡みも見られるぞ!

 

 深愛度を獲得できる趣旨の返事がヒロインによって全然違うというのも面白い。主人公のことが好き好きな幼馴染キャラの場合は、彼女の好意を受け止めてあげるような回答。先輩キャラの場合は、調子に乗らず顔をたててあげつつも、弱い面が見えたときにはしっかりと男らしさをアピールする。といった具合。

「ギャルゲーでそれって当たり前じゃない...?」と思われるかた、そうです。私もこれが当たり前だと考えています。でも、昨今の恋愛ADVの多くは、受け答えの内容を考えさせるトライアンドエラーを促すものにはなっていないのです。1300円という安価で買えちゃう作品でこれだけのゲームプレイができるのは素晴らしいことだと思います。

 

 本作独自のシステムで注意してほしいのは、選択肢を選ぶごとにオートセーブがされる点。いつでもそこから再開できるが、ギャルゲーによくある「こっちを選んだらどうなるかも見たいから、ここでセーブしておこう」はできない。もう一度選び直したい場合は、そのシナリオの進行度をリセットする必要がある(見たスチルやエンドは保存される)。まあ、どんなエンドになっても私だけいれば問題ないよね?途中からやり直さなくたっていいよね?私がいるもんね?という感じでしょうか。

 

アプリ上での会話だけじゃない

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 アプリでコミュニケーションをとるだけではなく、実際に会って話をするシーンもある。もちろんこのパート中にも選択を迫られるが、ものによってはアプリ上でのそれより高い深愛度を得られることも。やっぱり直接かけられる言葉というのは重みが違うのでしょう。

ちなみに、前述の通りの低価格作品ではあるが、対面パートにはスチル(一枚絵)も存在している。いきなり抱きつかれると割とドキッとするぞ!

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ヒロイン紹介

 ではここで『わたもん』のヒロインをちょっとだけ紹介!

 

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 まずは先程から貼っている画像に出てきている花森かすみちゃん。街で偶然、10年ぶりに再会した幼馴染で、今は声優を目指して一人暮らしをしているそうな。ゲーム開始直後はこの子の話しか選ぶことはできず、選択肢のレベル・ストーリーの展開といった内容的にも、本作の入門編になっている。

 

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 2人目としてプレイ可能になるのが芹沢みさき。大学のゼミの先輩にあたるキャラで、いろいろと強めなタイプ。先程のかすみちゃんのように接していては深愛度が上手く伸びていかないので、自身のキャラ・立場をシミュレートして臨むのが吉か。ただ、強さの裏にある弱さから、スイッチが入ったらどこまでも病んじゃうので落差に驚かされる。のと同時に、これが「病み」か...!とも強く感じさせられる。

初回プレイ時、かすみちゃんは余裕だったのにここで早速詰まり、後輩の難しさを感じましたね...。

 

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 最後に紹介するのは橘いつき。彼女、花森かすみルートで「主人公くんの周りをうろつきやがって!!!」と憎悪の対象にされてしまうことで少し登場している。私はそのとき、この子が女子であると認識できていなかったので、ヒロインとして出てきたときに驚きました。いつきちゃんまじごめん。

「男っぽい性格」「男友達のようにつきあえる」と作中で評されているものの、女の子なのでしっかりと寄り添ってあげないと、気持ちは傾いてくれない。更に、向こうから話を振られた時の返しがなかなか難しく、どこまで踏み込んでよいのか?という二人の距離感がうまく表現されている。実はこのルートのエンドのテーマ性が割と好き。

みさき先輩に苦労した後、同級生なら余裕でしょwと思ったらまた苦労したやつ。

 

他にもヒロインはあと3人いるが、それは実際にプレイしてからのお楽しみ。それぞれキャラも性格も境遇も違うので、やはり他の子と同じような返信ではダメだぞ!

 

まとめ

 『私だけいれば問題ないよね』は、シナリオ偏重の風潮により失われてしまった「恋愛アドベンチャーにおいて、ヒロインのことを考えたうえで選択をしていく」楽しさを思い出させてくれる良作。ヒロインがどういう状況で、心境で、背景を持っていて、そして今どんな言葉を返してほしいのか。その選択を矢継ぎ早に迫ってくるので、「これこそが恋愛アドベンチャーだよな!」と感じさせてくれるに違いない。

ヒロイン全員が「病む」のも、選択における思考材料のひとつとして上手く機能しており、単にヤンデレが流行っているから出しましたとは言えない内容。レベルデザインとして非常に素晴らしい仕上がり。

しかし残念なのは、最後の最後の選択が、シーンを回収する程度にしか機能していないこと。「好き」と「病み」は表裏一体で、ほんの些細なことで片方に振り切ってしまうのはわかるのだが、例えば「病み」期での選択の内容が反映された自動分岐...のようになっていると良かった。

ヤンデレというジャンルには明るくない(というかサブカル全般に疎い)が、想定しうる「病み」エンドは網羅されていたように感じる。個人的には「うん、わかる。わかるよ~」となったが、このジャンルに精通していたり、より特殊なシチュエーションを求めていたりするかたには物足りないかもしれない。

とはいえ、1300円というお手頃な価格で「恋愛アドベンチャー」「ギャルゲー」として素晴らしい体験ができるのがこの『私だけいれば問題ないよね』という作品。少しでも気になったかたはぜひ手にとってみてほしい。 Nintendo Switch 版以外にスマホでもプレイできることなので、自身にあった端末からどうぞ。

 

※本記事は Nintendo Switch 版のみをプレイした上での記事です。他の機種では内容が異なる場合がありますのでご了承ください。

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