アドベンチャーゲームの入江

アドベンチャーゲーム(ADV)を600本以上持つ筆者が、商業ゲームプランナーの視点からADVを紹介するブログ。ギャルゲーからミステリまでADVならなんでも。

【Switch/PS4】『放課後シンデレラ』ミニレビューもといバグの実態。俺たちに「放課」なんて...なかったのサ...

 『恋のステップアップは放課後に―』を謳い文句に、2021年度の末日に登場した『放課後シンデレラ』。『Eスクールライフ』などでお馴染み、学生生活の一本道 ADV をちょっとしたシステムでいい感じに見せる HOOKSOFT 系列で人気の作品。原作である PC 版は最近『放課後シンデレラ2』の制作が決まったとかなんとか。

 しかしこの家庭用版・コンシューマ版『放課後シンデレラ』は全てが破綻していた。今でこそ直ってはいるが...社会人となった俺たちに放課なんてない、と言わんばかりに、本作最大のウリである放課後のヒロインとの下校パートに入れない重篤なバグを持ったまま発売された。そんな「バグデレラ」の実態を今回は見ていこう。

 なお本レビューは家庭用移植にあたっての作業を行ったエンターグラム社及び共同開発のクーリエ株式会社、並びにデバッグにあたったポールトゥウィン株式会社に関連するところが大きく、原作の体験版は全くの問題なく遊べたということをまず明記しておく。



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Overview

 「放課後のドキドキ」にスポットを当てた本作は、自分自身で下校ルートを選択できるという最大の特徴を持つ。下校ルート上で出会ったヒロインと『一緒に帰る』を選択した場合に会話パートへ突入。帰路につきながら適切な話題を振ったり疑問に答えたりと、なんとも理想の「放課後」像に目を当てた作品と言えるのではなかろうか。

 キャラクタの名前も、頼りにしたいキャラだから「田寄-多乃実(たより-たのみ)」、ウザかわいいから「宇佐川-雪子(うさがわ-ゆきこ)」など、属性と名前で覚えやすいように統一されており、全てが「放課後のドキドキ」に集中させるための作りになっている。

―――はずだった。

 3月31日発売、6月3日に Switch 版で最後のアップデートが来るまでは。

 

※註:以下で述べるバグは、最新版では修正されています。必ず最新版にアップデートしてから遊びましょう。

 

放課後進入不能バグ

 これは PS4 / Switch 全ユーザーに対して発売当日から仕掛けられていたトラップ。放課後の下校ルートが自由に選択できるようになるまさにその直前の日常パートで、進行不能に陥る。本作の楽しみがこれから、というところでどうあがいても進めなくなる。

これの回避方法はマスターボリュームをゼロにすること、と FF 外の方から教えていただきました。ちなみにユーザーサポートからの返答は「当該部分をスキップしろ」。つまり未読スキップを使えってことでした。

ちなみにこのバグ、公式が確認したとの発表は2営業日後となる4月4日のことでしたが、当時 Twitter を遡っていたところ、発売初日に生放送でプレイしていてこれに陥った方がいた模様。つまり初日から知られていたバグだったらしい。が、近年の ADV の売れ行きの悪さから全く話題にならず

 

バックログ空白バグ

 特定のイベント中にバックログを開くと、そこになぜか台詞が記録されておらず空白ができる。その空白がログの最新の場合、閉じたらフリーズする。
これのせいで安心してバックログも開けない状態となり、暫く本作から離れることに。セーブも無しに何時間もやってきて、たまたま開いたバックログが空白だったらジ・エンドですよ。誰がそんなゲームやるんだ。

 

牛乳バグ

 上記バックログのバグが起きるほぼ直後の台詞が出ている状態でバックログを開くと進行不能になる。夜の校舎内で会話、ましてや牛乳の会話を行うと世界が壊れるので皆さん控えましょう。

一連のバグを Twitter に流し、公式が発表した最初のお詫びは上記リンクの通り4月4日で、サイトにちゃんとした声明が出たのが4月5日。その中にはどうやら、未読スキップと音声ゼロの併用で回避可能と書いてあるではありませんか。これはユーザーサポートからの返答とも一致します。

 牛乳バグにもう一度挑むいりえちゃん。

 

突破できNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!

そうして暫く放置した本作の Switch 版にパッチが来たのは4月15日のこと。

今度こそはと思い牛乳バグに三度目の正直。

 

Fin.

こいつが治ったのは、結局6月3日の最後のアップデートでのことでした。

 

 自分はデバッガーなどやる趣味はなく(そもそも仕事でデバッグは絶対通る道なんだよ)、田寄ルートで偶然遭遇したものでした。空白バグは、たまたま台詞を聞き逃していなければ見つかっていなかったかもしれないです。ただ、それでも他のルートにも同様のバグがあったら...と思うと恐ろしいですね。というかそもそもパッチ無しじゃ下校ルートを選べない、何のために存在するかわからんブツになっていた時点で酷いものですが。

 この一連の流れから思うことは、『社会人の君たちに「放課」なんてものは無い』、というエンターグラム様の厳しい『現実を見ろ』というお言葉だったのではないか、ということですね。

 



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下校パート

 ただ、バグなんかなくても下校パートには大きな問題があるのではと。5人のヒロインがどこにいるかをクリッカブルマップからヒントを聞けたり、下校パート直前の占いでヒントをもらえたりするのですが、下校中に完全に目当てのヒロイン以外と話をしてはいけないというのはいかがなものか。

 説明すると、クリッカブルマップには15ほどのポイントがあり、そこにはもちろんモブが配置されている場合もあるわけです。このモブの話を聞いたが最後、下校パートは終了となり、下校ルートのその先にヒロインがいたとしても強制的に一日が終了します。つまり、モブの会話すら楽しむことが出来ないのです。最近のギャルゲーがヒロイン選択制一本道で面白くないとは随分言ってきましたが、とうとうモブさえ許されなくなったとは恐ろしい時代です。

 ちなみに下校パートそのものは、一緒に並んで歩いている感じの絵になって良い感じです。場合によってはヒロインの取り巻きと一緒に話しながらということもあり、放課後感は担保されていますね。

 しかし、上記のモブの話を聞いたら~という仕様はヒロインにも適用されるため、ダブルデートのような下校は期待できません。ひとりめが『もうちょっと一緒にいたいな』と言ったら何故かクリッカブルマップに戻り、別ヒロインとの下校パートに入れるという謎仕様はありましたが。一体どういうことだってばよ。ひとりめと別れた時には夕方だったのに別ヒロインと話し始めたら昼になるし。

 攻略はとりあえず、占いを聞いて目当てのヒロインがいるルートを通り、他のヒロインないしモブは無視して目当てのヒロインにのみ話しかければいいのです。なんという殺伐としたゲームなのでしょう。正直、モブの話も聞きたいし、ヒロイン2人に対して『どっちなの!?』と迫られるようなものを期待していたのですが...。まあはやり近年のヒロイン選択制一本道ではそれは無駄というものでしょうか。

 

残バグ

 Switch / ver.1.03 ですが、田寄父の話が急にメッセージウィンドウが非表示になって始まったのは何。場面を通り過ぎたら回復したけど。

まああとは、グレースケールかけているけど、ヒロインの立ち絵が変わるときにグレースケールが一瞬解除されるあたりも見逃しませんよ。まだあなた達が直すべき場所は残っているのではないでしょうか。

 

おわりに

 まず私はバグまみれで世に出てきた本作に、バグを理由に低評価をつけるつもりはありません。低評価をつけるのは会社に対してです。だがしかし、肝心の下校パートの自由度の利かなさ、やはり本作はいまひとつといったところ。

 もしデバッガーやりたい!!!って方がいらっしゃいましたら、パッチをダウンロードせずに色んなキャラのルートを遊んでみてください。私は最初から田寄さんが好みだったので、彼女のルートにまつわるバグしか見つけられていませんが、バックログ関連のバグはかなり埋もれていそうなので気にはなるところ。

 

っていうか。

そういうのを発売前に潰すのが開発とデバッグ会社のやることだろ!!!(現場視点)


▲こちらの画像に深い意味はございません

 

 まあ、とはいえ重篤なバグは治っているなずなので、今からならパッチを当てれば安全に遊べますのでご安心を。この記事は発売日に予約までして買った人間の怨嗟とでも思っていただければいいんです。

 それでは私はオシャレなところの近くを通って下校しますので。

 

(C) HOOKSOFT / ENTERGRAM

 

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