アドベンチャーゲームの入江

アドベンチャーゲーム(ADV)を600本以上持つ筆者が、商業ゲームプランナーの視点からADVを紹介するブログ。ギャルゲーからミステリまでADVならなんでも。

【PS4/Switch】『Robotics;Notes DaSH』感想~これは『Robotics;Notes ダル chu☆chu!!』ですか??

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「今でも、ロボットが好きですか?」

科学ADV第3弾、『Robotics;Notes』の正統続編である『Robotics;Notes DaSH』が登場。
『Steins;Gate』の登場人物であるダルを主要キャラに迎え、
2020年夏の種子島に再び出現した「君島コウ」に立ち向かう。


倒したはずの君島コウが、何故また現れたのか。
本作での関心事はここなのではと思う。

しかし蓋を開けてみればこの君島コウは何かがおかしく・・・?

 

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「下品」

2020年夏、種子島。毎年恒例の夏祭りの時期。
しかも今年は種子島の高校生が世界を救った年ということで、大幅にパワーアップ。
そんな祭りの開会式、空に現れた君島コウは
「君たちの身の回りで不思議なことが起こるだろう」と告げる。

するとどうだろうか。
女性キャラがネコミミメイドになったり、体操着にブルマ姿になったり、
果ては彼女達が水着になったら、ダルが水玉コラを生成する眼鏡を装着し・・・。
それを八汐くん達にも回覧させ・・・。

あまりに下品。お粗末。続編でやるような内容ではない。
思うに、元々ファンディスクの構想だったのが
前作主人公である海翔ではキャラが弱く、実現のためにダルをくっつけたのではと推測。

暢気なもんです。お前は今から『Robotics;Notes ダル chu☆chu!!』だよ。

 

 

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八汐空気くん

海翔を「前作主人公」と書きましたが、本作はダルが主人公ポジションです。
ダルは元々濃いキャラをしているためか、今回海翔が空気気味です。
海翔自体も設定が変わっており、
前作では「キルバラ」というゲームにやたら拘泥する融通の利かない感じのキャラで、
それこそ「しょーがねえなあ」と言って行動するようなタイプだった。
だが本作で宇宙飛行士を目指す浪人生となった彼は、キルバラから離れていた。
残ったのは、クールぶったただの鈍感青年。
つまりはメインキャラとしては凡百に成り下がってしまいました。

で、前作でメインを張っていた海翔とヒロインのあき穂は
本作では高校卒業でロボ部から離れている。
また、本作主人公のダルも外部の人間なので当然ロボ部ではない。
つまり、話が全然「ロボティクス」でも「ノーツ」でもないんですね。
このあたりも、後日談的ファンディスク感を強めている要因はないかと。

 


 

ここだけは正当に進化

前作から強化されているのは、立ち絵の表現ですね。
『Robotics;Notes』では伝統的に3Dキャラが立ち絵で使われているのですが、
キャラが横を向いた絵や背中の絵も多く使用されており、
前作以上かつ細やかに動きが付けられています。

しかも、場面によって立ち絵のライティングも変化している徹底ぶり。
活用されていた場面は少なかったが、立ち絵と背景を上手く融合させ、
本当にそこにキャラが立っているように見せていたシーンもありました。
このあたりの表現は「正統続編」らしい進化。

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個別ルート(前半戦)

ネタバレを回避しつつ、個別ルートの感想。
分岐のトリガーは非常に少なく、攻略は容易です。
総当たりする余裕があります。

・愛理√
まさか愛理があんな姿になるとは、思ってもいませんでした。
ただ、彼女としてはそれが夢だったとも言える姿。
そして、正ヒロインにはやっぱ敵わねえわ・・・。
最期のすれ違いのシーンのCGがいい味出してる。

・淳和√
シャイガール克服計画!淳和がついにロボットを操る!
まあ対策法自体は5秒でわかるような内容だった。
終始、ダルがつきっきりでいい感じになってましたね。
海翔くんの立場は一体。


・綯√
海翔くんが主人公なルート。無印本編の続きっぽい短編です。
あの人物がどうしてあの相貌だったのかが意味不明。
嫌がらせでは終わらないでしょ、キャラの使い捨ては嫌い。

・フラウ√
┌(┌^o^)┐ホモォ...

・昴√
無印の頃から険悪だった日高家の親子の関係、ついに解決へ。
ヒロイン以上にいい話でしたね。
変に真面目な父子の機微がよく表現出来ていたと思います。




個別ルートが本筋と全然関係のない話になっているのは、
ルート分岐前に君島コウを消してしまっている
→本作最大の脅威がここで去っているから
なんでしょうねえ。
やっぱりファンディスクでいいよ。

 


 

後半戦

5ルートクリアで、あき穂ルートが出現。


・あき穂√
これが、最期の夏―。
突然「ロボット卒業」を告げたあき穂だったが、
実はその理由はとてもセンチメンタル。
鈍感ボーイな海翔と今度こそいい感じになれるのか。


そして、例の夏祭りに関連してやっと部活感が戻ってきました。
フラウも昴も来年には卒業。種子島にいるかもわからない。
これが、共に取り組める最期の夏というわけです。

あき穂は夢を模索中、というのが鍵になりそうでしたが
そんなことはありませんでした。結局彼女は何を目標にするのでしょう?


復活した君島コウを消した原理や愛理√、あき穂√で使われていた手法が、
どうも『Chaos;Child らぶ chu☆chu!!』っぽいんですね。
「あれ、ロボノってこんなんだったっけ?」と疑問がわく。


また、その君島コウも
「前作で消したのはなんだったのか」「何故復活したのか」
「ネコミミメイドなどの振る舞いはなんだったのか」
などなど、非常に設定が雑。
伏線らしい伏線もあったようには思えない。



・最終ルート
やっっっっっと「拡張科学」らしいところが出ました。
実際のところ、こことあき穂編くらいしか「正統続編」を名乗れる内容ではなく
後半に全てが集約されていると言っても過言ではない。

でも君島コウまわりは前述の通りなのでお察し。

再度世界を混乱に陥れ、計画を遂行させようとした君島コウとの決戦。
最後はロボノらしく「仲間と力を合わせ、巨大ロボで戦」い、
「拡張科学」らしく終了。めでたしめでたし。

 


総括

「正統続編」を名乗れるようなものではない。いいとこファンディスク。
『Chaos;Child らぶ chu☆chu!!』で、ファンディスクと言っておきながら
地味に本編のラストから繋がる物語があったのですが、そんな感じです。

せっかくの独自システムである「ポケコントリガー」も上手く活用出来ていない。
前作では「ツイぽ」で過去作キャラと繋がれたり、
君島レポートまわりで「居る夫。」を多用したりレポートの内容閲覧が出来たり、
「キルバラ」のシーンではコマンド入力を求められたりとしたのだが、
本作ではポケコンを開く機会自体が稀になってしまったのが残念。コマンドがほぼ飾り。

物語も終始「万能キャラ」となったダル目線で進み、
感情移入もしづらく面白みがあるとは言えない。
加えて、「拡張科学」らしさが最後にしか出てこない点や
過去作に似通ったトリック、「ロボティクス」でも「ノーツ」でもない話が長い点から
良い評価をすることは出来ない。


残念ながら、『Robotics;Notes』に大いなる期待を持って購入した場合は
期待はずれとなるだろうと言わざるを得ない。

科学ADVシリーズにはもう一度、『Chaos;Child』のような完成度を誇る作品を
生み出してくれることを期待しよう。

2019.01.31 発売
(C) MAGES./5pb./Chiyo St. Inc.
(C)2012-2014 MAGES./5pb./Nitroplus

 

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