アドベンチャーゲームの入江

アドベンチャーゲーム(ADV)を600本以上持つ筆者が、元ゲームプランナーの視点からADVを紹介するブログ。ギャルゲーからミステリまでADVならなんでも。

【PS2】『花と乙女に祝福を』レビュー。顔は実妹になれても身体はごまかせないよ、お兄ちゃん!

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『恋する乙女と守護の楯』が思いの外面白く、他にも男主人公が女装するゲームってあるのかなと探したら、コレクションの中にありました。

今作は、学院に籍を置く妹…つまりそれまでに顔を見られている人物に成り代わってしまうというもの。

でも女装をするのは、双子の兄。公式サイトによれば「俺たち双子を見分けられる奴なんてそうそういない!」と自信を覗かせるが…

 

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ストーリー

主人公・月丘彰の双子の妹、月丘晶子は幼い頃から病弱で入院を繰り返していた。

せっかく入学出来たルピナス学園も入院のため長期で休んでしまっており、なんとか進級はさせてもらえたものの、このままでは出席日数が足りず退学となってしまう。晶子はこれ以上周囲に迷惑をかけないために自ら退学の道を選ぼうとするが、妹想いの彰はそれをどうしても阻止したかった。

そこで出席日数が足りるように、彰は晶子が退院した体で学園で過ごすことを決意する。元々双子で顔はよく似ていたし、幸いにも晶子の胸は控えめだったのでパッドでなんとかなった。

登校初日、事前に調べたのにも関わらず学園で迷子になってしまう彰。行き着いた先で、長髪のお嬢様がとある生徒を叱責する場面に出くわす。彰はそのお嬢様が誰かわからないまま、彼女の一連の行動を批難した。ところがその彼女は、なんと全校生徒の憧れの的にして超がつくお嬢様・宝生聖佳(ほうしょう・せいか)だった。聖佳に気に入られてしまった彰は、晶子の立場を揺るがす事態に巻き込まれ―――

 

ポイント

女性として入学するのではなく、既に在籍する女性(晶子)と入れ替わるところ。当然晶子にも学園での交友関係があるため、そこも気にしながら生活しなければならないのが彰くんのつらいところですね。

晶子は園芸部で花について語らせると止まらないような花マニア、親しい友人は名木城都(なぎしろ・みやこ)と鹿島志鶴(かしま・しづる)で、特に都とはベッタリな関係。そして学園ではあまり目立たないタイプ…という基礎情報をインプットして向かった初日!

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抱きつかれたら一発で体格の違いを認識されちゃいましたね。その後も体育の時間の着替えでモジモジしていたり、晶子の大好きな花の話でミスをしてしまったりと、都から怪訝な目で見られるようになってしまい…

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その夜にはバレてしまいました。

普通はすぐに気付かれてしまうと思うのですが、華奢な男性ならそうでも無いのでしょうか…?(事実、周囲は気付く様子無し)
ただ、「復学してから目つきが精悍になった気がする」と言われたり、自分は男だからと力仕事を引き受けたら「退院したばかりの晶子が?」と不審に思われていたりと、ちょいちょい男っぽさは出てますですが、男性と入れ替わったことでなんとなく雰囲気が変わった、というのは、物語中晶子が人望を集めることになる理由にも繋がっていると思いました。「うまく言えないけど、晶子さまに惹かれますわ…」みたいな。

ちなみに、晶子と都は幼い頃から一緒に遊んでおり、彰とも面識があったため気付いた模様。晶子のためと説明したら一応納得してもらえました。ですが、都だけには諸々の相談が出来ることにもなり、大事な存在となります。

 

テーマ性 

「女装」というテーマ上、やはり「男である」ことへの葛藤や「男だとバレた後」が一番重要だと考えています。

晶子のためにやってきたのに、自身が築いてしまった人間関係が無視出来ないものとなってしまった。しかもそれは性別を偽り、相手を騙した上で成り立たせてしまった
こういうのはやっぱり崩れるときは一瞬で、しかも信じていたからこそ深く傷ついてしまうもの。その後の悲しみや償い、寂寥がよく描かれています。

他にも、が本来の姿でヒロインとデートしてしまったが故に、晶子に対していらぬ噂が立ってしまうルートも。彰と晶子が本当にそっくりな顔立ち・背格好をしているという設定を上手く使っています。

全体的に見て、女装(女装設定)にしっかり意味がある作品だったと感じました。

 

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うわさ 

「噂」の話をしましたが、『恋する乙女と守護の楯』と同様にこの学園の女の子たちも噂話や思い込みが大好き。
物語序盤で彰を取り合う都と聖佳は三角関係と言われたり、そんな彼女たちをたぶらかした存在として悪女と思われていたり…。

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この程度ならまだいいのですが、大体のルートで終盤は極端な噂に振り回されることになります。しかも、必ず悪い方に尾ヒレがついて流れてしまうので性質が悪い。こればっかりなので、ハッピーエンドが来るとわかっていても心が痛いし、ちょっと単調気味。

 

ゲームとして

特に目新しいシステムは無し。ただ、10年ほど前のゲームということもありちゃんと選択肢が存在します。

中盤までで「生徒会」「園芸部」どちらのルートに入るかが決まり、その中の選択で個別ルートという作りになっているので、個別ルートはそれほど長くない。が、明確に分岐のフラグとなる選択が混ざっているのでしっかり考えよう。
…うん、そういうのでいいんだよ。ちゃんと考えて「ゲーム」を遊べますからね。

本作は原作が PC で、移植にあたって新ヒロインが2名追加されています。「生徒会」「園芸部」それぞれ1人ずつなのですが、そのヒロインと出会う選択をしてしまうと、その後延々と読むだけモードになってしまうのはマイナス。
出来上がっているシナリオに彼女たちの登場シーンを追加するのは難しいにしろ、彼女たちのルートにも少しは起伏をつけてほしかった…。

地味に好きなのは、この画像の選択肢。

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どれを選んでも全く変化しない「あそび」の選択肢ですが、最近はこういうのすら見かけなくなったので寂しい。

 

その他

台詞が入り切らず、中途半端に改ページされていることが多々あって気になる。どうにかならんかったのか。

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まとめ

晶子になりかわって学園生活を送る彰は、晶子が本来あるべきこの学園に復帰したことを考えながら行動するところが、とても目立つ存在になってしまった。晶子も不承不承といった感じだったが、やはり男性と入れ替わったことで、生徒からの見え方が少し変わったんだなという雰囲気を感じられた。

言動が粗野だったり淑女としてのいろはが無くて注意されたりというシーンは無く、あまりにも女性としての振る舞いに馴れすぎている点に若干の物足りなさはあるものの、個別ルートでは女装が故の苦しみなどが描かれており、「女装の意味」はしっかりと存在する。但し、女学院の特徴を表現するためか、噂話によって環境が良くも悪くも激しく変化するというパターンが多かったのはいまひとつ。

読めてしまうベタな結末もあったが、それでも、設定を活かした王道といえるものだったのでそこに不満は無い。

欲を言えば、自身のいない間にこれだけ立場が変わってしまった晶子が、復学したあと学園内でどう過ごしているかを知りたかったところだが、全体的にプレイして良かった作品

 

←が →になるからおめかしってこわいね

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