アドベンチャーゲームの入江

アドベンチャーゲーム(ADV)を600本以上持つ筆者が、商業ゲームプランナーの視点からADVを紹介するブログ。ギャルゲーからミステリまでADVならなんでも。

【ネタバレ全開】『Memories Off -Innocent Fille-』ひたすら感想を述べる。

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前回の記事は本作の紹介、イントロダクションみたいな感じで、
今回はネタバレ全開でひたすらメモオフIFとメモオフへの想いを語る記事になります。

 

「メモリーズオフ -Innocent Fille-」 PS4/PS Vita/Switch 好評発売中

『Ever17 -the out of Infinity-』からアドベンチャーゲーム、ひいては KID のファンになった私は
当然の流れで同社の『Memories Off』シリーズにも触れることとなりました。

メイン作品は当然のこと、『メモオフみっくす』や『メモオフ festa』といった
外伝も楽しませていただいてきました。

そんなメモオフは今作が最終作。
プロジェクトコード・『其れは雪片。咎めの如く。』が発表された頃から・・・
そして2016年に突如、開発中と発表された頃から・・・
ずっとずっと待ち続けていました。


その重い想いから、今作は恋愛ADVの枠に嵌まらないサスペンス物であると私は思います。
18年の歴史を結実させた、シリーズ史上最高の、「最昂」の物語。
ネタバレ全開でお話しさせていただければと思います。

 

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ライトサイド

メインヒロイン・嘉神川ノエル周辺の人間関係を描くルート。
でもですね、ノエルがいじめられているという事実は重い・・・。
これは結構素直な感想で、「ライトなのに全然軽くねえ・・・」とプレイ中思ってました。


姉のクロエ先輩の登場は推しヒロインなのでとても嬉しかったですね。
しかもメモオフ6主人公の塚本志雄とご婚約済みだとか。
娘の結婚を祝う親みたいな感情になりました。結んでくれてありがとう!
(※娘もいないし親でもありません)

全編通して、ノエルがとても強い子だということが伝わってきます。
「感情を透明」にしていた、出会った頃のノエルも
負けない「想い(コイゴコロ)」を宿してからのノエルも
どっちも強いですね。

ノエルのルートでバッドに行くのは明らかな地雷選択肢だったので、攻略もライト。
クリスマスの夜に無事二人は結ばれます。
でも、主人公の楠瀬累は期間限定で本州へやってきている身。
その期間が終わった後の展開が気になっていました。

別れの時は来てしまいましたが、ベストエンドで「来ちゃいました」といってドアを開けるノエル。
これはやはり「泊めてくれないかしら?」と雨の中訪ねてきたクロエ先輩をイメージしていたのでしょうか。
クロエ先輩推しなので(2回め)最高という言葉以外見当たらないです。

正直、志雄との関係性の話題が出た瞬間 Twitter で「わーーーーっ」と言いたくなってしまいました。
やっぱりクロエ先輩推し(3回め)としてはこれほど嬉しいことはありませんからね。

ライトサイドはこんな感じでしたね。
もう1つの大きなルートとして、ノエルの親友である志摩寿奈桜さんのルートがあるのですがそれは割愛。
すいません、このキャラあんま好きになれませんでした。
ただ、寿奈桜視点の R.A.I.N.s があったのは面白かったです。

ゲストキャラで双海詩音が登場したのは驚きでした。
中の人が引退されていて、『After Rain』ではボイスなしだったので。双海無音なんて呼ばれているのを見たことが
違うかたが声当ててるのかな?と思ってエンディング見たら、本物じゃん!てなりました。

 


 

ライトサイドでも、物語の核心に迫るヘヴィサイド、つまりは「全ての始まり」の入り口は描かれているわけで。
(いわゆる共通ルートみたいなものですね)
そこで柚莉についての話は聞かされていました。

「オルタナティブ・ラブストーリー」を謳っていること
公式サイトでの琴莉の台詞が無言であること

↑そしてこれ。
これらのことから、柚莉の中に琴莉という人格がいるのでは?という予想は立っていました。
物語順が固定で、それまでの雰囲気からどことなく『Remember11 -the age of Infinity-』っぽいなと感じてもいましたし。


この中で語られていた
・7年前の事件の後、父親のことで琴莉が目立ってしまったから、嘘の葬式を上げて一度この世から存在を消した
・その事件で亡くなった琴莉達の父親には刺し傷があった
・柚莉の幸せは周りのみんなが幸せでいること。それを護るのが柚莉の幸せ
この3点あたりが伏線でしたね。

 

 

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ヘヴィサイド Twinルート

人物関係を整理してみると

・三城柚莉
7年前の火災でPTSDを負っている。
周りのみんなが幸せでいることを願い、火事で入院している母親が琴莉を求めた際に
琴莉の真似をしていたのがついには交代人格として独立してしまった

・三城琴莉
柚莉のもうひとつの人格。柚莉の記憶から、現在の琴莉はこうだろうと作られた人格。
累のことが大好き。累も琴莉のことが好き。幼少のころからそれは当然のことだったため
この人格は特に累に執着する

・三城莉一
柚莉と琴莉のことは知っている。
琴莉はあの日死んだのだから、その人格は消さなければと言う。
最後は事の解決を累に託す。

こんな感じになってたかなあと。

今思えば、柚莉の交代人格が琴莉、つまり同一人物であるのに
「嘘の葬式を上げて一度この世から存在を消した」というのは引っかかる点だったのかも。
火災の後、入院した柚莉達の母親が琴莉を求めてしまったがために出てきたのが
柚莉の中の琴莉であるから、事件直後には本当に琴莉は死んでいるという認識のはず。
真実を隠しながらも納得の行く流れを作り上げるストーリーテリングに脱帽です。

伏線ぽかったけどなんでもなかったのが、
累が昔琴莉に贈った真鍮のキーホルダーは柚莉が持っているけど、
柚莉に贈ったボールは持っていなかったということ。単純に火事で焼けただけか。
「嘘の葬式」というのは、実は琴莉が主人格で柚莉が交代人格という構成を隠すためなのか?と思えました。

最後には柚莉と琴莉のふたつの人格が、柚莉というひとつの身体の中で
累をめぐって喧嘩しあう。そしてどちらを選ぶのかを要求してくるわけなんですね。
案の定二人とも目がヤバくなっちゃってて、ヘヴィサイドの何たるかを充分に味わったシナリオでした。

しかしこの時はまだ、隠された真実があるなんて、思ってもいませんでした・・・。

 


 

ヘヴィサイド 真相ルート「其れは雪片。咎めの如く。」

真相ルートは怒濤の畳み掛け。
あらゆるものをいい意味で裏切ってくれました。


ノエルに傾倒してゆく累の姿を見る琴莉。
だんだんとノエルの周囲に、黒い思考を持った何かが迫ってきていたのが明白となりました。
嫉妬に狂った琴莉の仕業と思いました。

真相ルート手前ですが、ついに死人が出てしまうわけで。
それはしつこくノエルにモデルをお願いしてきていた、ライターの久世奏波さん。
彼女は生前、累に「琴里という子を知っているか」と問いかけてきていました。
誰しもが「ん?」と思うポイント。そしてその謎を残したまま死んでしまう。
そんな形で何かを残されたら真相見るしかないでしょう!!!鬼か!!!って感じでした。


ところでこの日、ノエルは累の部屋でいろいろあってシーツ1枚の姿に。
完全にクロエ先輩の妹ですね。あんたたち姉妹はどうしてそうやって!


とにもかくにも琴莉は遂に人を殺めるところまで来てしまった。色々ともう戻れない。
そしてノエル自身にも魔の手が及び始める。
柚莉の姿を使って、ノエルの紅茶に睡眠薬を仕込むという何とも恐ろしい人格。
ここで空気を読まない志摩寿奈桜さんの選択肢につきあってしまうとバッドエンド。
彼女のほうは彼女のほうで、飼っている犬の小屋が壊されてたとのことなのですが
きっとこれも琴莉なのでしょうね。

そういえば、この犬が3つの小石を握っている?だかしていたシーンがあった気がしますが
あれは何の伏線だったんだろう・・・。(書きながら思い出した)

前述のバッドエンドを回避後、死人が出た状況を鑑みてなるべく外出を控えていた
累とノエルなのですが、ノエルが累からのいわゆるLINEでとある場所に呼び出されます。
(ここの伏線考えたかた、現代ならではの仕組みを使っていて上手い!って思いました。)
この累のLINEですが、確かに累から送られてはいるのですが、送った覚えはないもの。
そして慌ててその場所へ向かいますが、そこでノエルが殺されている・・・。
ノエル殺害の動機として考えられるのは琴莉の嫉妬心。
真相ルートに未だ入れていない状況でも、辻褄は一応合っている。

ここまでで気になることは
・「琴里」というのは誰か?
・(書いていませんが)久世さんが握っていたロッカーの鍵は何か?
・ノエルを山に呼び出したLINEはどういうことなのか?
このあたりの謎を残しつつ、ついに真相ルート突入です。



真相ルートのタイトルの時点で鳥肌。
「其れは雪片。咎めの如く。」は本作のプロジェクトコード。
ここに来てそれを回収するのは興奮しますって!


このルートでは、ノエルの殺害がギリギリのところで回避されます。
その立役者は、ノエルの通う女子校の生徒会長・日紫喜瑞羽。
そして殺害を企てていたのは、完全におかしくなってしまった琴莉・・・らしき人格。

この時点では琴莉がついに狂ったとも取れる感じだったのですが、
その琴莉が、「今日はコトリちゃんに免じて許してあげる」みたいなことを言って引き上げました。
はて、「コトリちゃん」とは一体・・・?
しかも瑞羽は累の過去を知っているっぽい。
琴莉らしき人物から、累はどうやらあの火事の日、琴莉達の父を殴り倒したことが明かされます。
ひいては「殺してしまった」と累は思うわけです。

その後瑞羽は、自分こそが7年前に死んだはずの琴莉であることを明かします。
これには驚き。
まさか別人格として体現している人間が生きているとは思わないでしょう!

7年前の事件で、琴莉が父親を刺殺したのではという噂が立っており
そこから琴莉を護るために嘘の葬式を上げたとのこと。

そして彼女こそが「琴里」であることも明らかに。
三城兄妹は本当は三つ子ではない。
琴里は三城父の、莉一と柚莉は母の子供で、年齢が同じだから三つ子ということにしていたそうだ。

ここ、情報量がすごいことになります。
多分本作で一番昂ぶるのはここではないでしょうか?
少なくとも私は、柚莉の中に琴莉という人格がいるのに、その琴莉が生きていると知った時は
それはそれは驚きました。
何が『Remember11』っぽいだ。全然違う角度から衝撃の事実を以て刺された気分でした。



ここで累達は、真実に迫るために例のコインロッカーの鍵を解錠しようと試みます。
この時、信にも協力を仰ぎ、唯笑ちゃんや智也が手伝ってくれたのが胸熱。

どうやら久世さんは瑞羽の父について調べていたようで、
例の事件で噂になっている、三城父の刺殺の事実はあったと確信していた。
そして、柚莉の中に「3人」いるのではという仮説を残していた。 

 

このあたりまで来ると、幼少の琴里らしき女の子が炎の中で刃物を持っているCGが何度も出てきていると思います。
でもこれ、きっとミスリード。気付いた時はにやりとしました。

あの日琴里は、累が贈ったペンダントを首からさげていた。
だから、その形に火傷の跡が今でも琴里(瑞羽)には残っている。
しかし件のCGの少女は、首元に何もない。
それはこの少女が琴里ではないことを語っていたわけです。
最初から答えは出ていた、というわけなんですね。

 

ではこの少女は誰なのか?
それは、柚莉の中にいる3人目の人格にして、例の事件の時に生まれた人格である「希莉(キリ)」
莉一、柚莉と本当の三つ子になる予定だった子供。
彼女のみ死産してしまい、三城母は仏前で希莉に「家族を守っていてほしい」と何度も語りかけていたそう。
そんな姿を見た柚莉が無意識に宿していっていた人格で、それが事件の際に明確に生まれてしまった。
何と言っても柚莉の幸せは「周りの皆が幸せでいること それを護ること」だから。

希莉は「護る存在」(作中では「守る存在」でしたが敢えて漢字を変えています)として生まれた。
家族を、柚莉を、琴莉を護る存在として。
そんな彼女こそが『Innocent Fille』。
自分のしたことに何の罪も感じない、恐ろしい子供のような人格。


父親を刺したのも希莉の人格。累はただ三城父を気絶させただけに過ぎなかった。
三城父は子供に暴力を振るいがちだった。護るために生まれた希莉としては当然の行為だった。


ここまで空気気味だけどいいやつだった莉一くんがここで再登場。
希莉とともに琴里を攫い、学園で決着をつけるという展開に。
↑もう恋愛ADVの感想文で出てくる文字列じゃない・・・。

何故そんなことになったのか。
累が柚莉と琴莉のことを知っていながらそれを放置し、ノエルに傾倒していったことだと言います。
親友ポジションのやつが最後の最後で狂ってしまった。
琴莉か希莉かはわからないが、柚莉も狂ってしまった。

莉一は久世さんを殺害する過程で、琴里の真実に辿り着いた。
累と琴里の間柄を知りつつも琴里を愛してしまっていた莉一に、これ以上の朗報はなかった。
琴里を今度こそ自分のものにしようと動くわけです。

ちなみにノエルを殺そうと呼び出したのも莉一の仕業。
もともと累はガラケーを使っていて、柚莉の古いスマホを莉一から譲り受け
LINEのようなツールの登録を莉一が代行していました。
そのスマホには柚莉の監視用にスパイウェアが仕込まれていて(柚莉はDIDなので)、
結果的にこれらの要因を上手く使ったわけですね。
呼び出しLINEのあと、累はなぜか強制的にログアウトさせられていた。
他の端末からのログインがあったからこうなった、というまさに現代的なトリック。


「二者択一」に相応しい展開。
そして、「歩き出したら戻れなくなってしまう」ことが多いメモオフらしい展開。



ED曲が流れたことからも、恐らく本作の真の結末であろうエンドでは
累は琴里とともに歩いていきます。

過去を乗り越え、今を生きる。
メモオフ1stから積み重なってきた「かけがえのない想い」の形の集大成となったのではないでしょうか。



【すべてのはじまりは、ただ君を護るために。】
誰もがみな、誰かを護ろうとしていた。
本作のヒロイン達の行動原理には、この想いが共通であったと思います。
しかしそれは少しずつすれ違ってゆき、しまいには大きな歪となってしまい。
なんと「せつなくて儚い」物語なのでしょう。



伏線が回収されていく様は本当に素晴らしかったです。
少なくとも本作は、恋愛ADVのシリーズであるメモオフでありながら
恋愛ADVとはいえない、サスペンスであったと私は思います。
しかしメモオフという作品が根底に持っていた想いや血は確かに流れていた。そう思います。

『Ever17 -the out of Infinity-』みたいなものですね。
あれも公式には恋愛ADVと言われますが、実際はSFなADVですから。

 


 

アナザーエンド

メモオフ最終作、ついに稲穂信も結ばれることに。
相手はお京さん。キャラの設定とか全然知らなかったのでてっきり年上だと思っていたのですがまだ24らしい。
風流庵の感じでは結ばれる想像も出来なかった2人がこうしてくっついちゃいました。

過去作ヒロイン総出だったのが嬉しかった。ファンのためのエンドでしょう。

2つ言わせていただくとしたら
信くんも、やることはやってたんだね ってことと
そこはかおると結ばれるんじゃないのかよ ってことですね。

 


 

Memories Off -Innocent Fille- ネタバレ全開での感想はここまで。

終わってみれば、メモオフ。そんな感じです。

最後になりましたが、本当に素晴らしい作品をありがとうございました。
想い続けています。待っています。
また何らかの動きがあることを。
ADV好きとして、そしてメモオフファンとして・・・。
 

(C)MAGES./5pb./Gloria Works

  

 

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