アドベンチャーゲームの入江

アドベンチャーゲーム(ADV)を600本以上持つ筆者が、元ゲームプランナーの視点からADVを紹介するブログ。ギャルゲーからミステリまでADVならなんでも。

【PS4/PSV/Switch】『恋する乙女と守護の楯 ~薔薇の聖母~』感想。前作の流れを汲むも危機感はやや欠如...

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2019年最後に発売された恋愛ADVの1つ、『恋する乙女と守護の楯 ~薔薇の聖母~』。

2007年にPC版が、翌年にPS2移植版が発売された『恋する乙女と守護の楯』の続編が家庭用機向けに登場。
これを聞いてプレイした前作がなかなか面白かったので購入。

が、今作での任務は日常風景が増えすぎており、些か緊迫感に欠けるものだった...。

※前作のレビューはこちら

 

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総評:悪くはないが、前作が良かったために良くもない。

 

ストーリー

前作・『恋する乙女と守護の楯』における、セント・テレジア学院の女装潜入任務の実績が評価された主人公・如月修史(きさらぎ・しゅうじ)は、所属する警備会社・アイギス内で「女装潜入担当」としての地位を築かれていた。
3年の時が流れ、今回で女装を最後にすると約束させた任務は、セント・テレジア学院を思い出させる、お嬢様学校への潜入。かの学園には、来る生徒会役員選挙で会長に当選した者を傷つけるとの予告状が届いていた。
任務は会長の護衛ではなく、まさかの生徒会長への当選!再び「山田妙子」として女性の園に潜入することとなった。

立候補者は2名。「学園委員会」の眞木莉里(まさき・りり)と、「淑女同盟」の土屋真愛(つちや・まな)。この両集団の対立の中に飛び込み、見事生徒会長となって彼女らの「楯」になれるのだろうか...

今回の当面の目標は生徒会長になることなので選挙活動の描写が多く、それがつまり日常描写の増加にも繋がっている。

前作では護衛対象が明確になっており、また敵からの襲撃も頻繁に起こっていたため緊張感があった本作ではそれが漠然としているのもあり、事件が修史とヒロインの距離を近づける舞台装置になってしまっていると感じられる。

事件らしい事件が最初に起こるのは第三章に入ってから。基本は選挙戦、委員会・淑女同盟間の対立をメインとした生活が描かれている。

ただ日常描写も悪いものではなく、淑女同盟の土屋真愛はセレブのお嬢様でありながら(だからこそ?)かなりのおバカキャラ。顔芸要因、とまでは言わないが表情が豊かで面白い存在。

f:id:irienlet:20200124135153j:plain▲おバカキャラとは一体どういう意味ですの~っ!?

前作では、お嬢様が急に「美容のためにオイルを塗ってほしい」とか「お風呂パーティをしますわ」と言い出して修史くんの正体がバレそうになる危機もあったのですが、本作ではそのような描写は無し。修史自身も、「女性同士、いきなり風呂に誘われたりするから恐ろしい」と前回の潜入を回顧するシーンがあるのにも関わらずだ。
何か学生的なイベント...体育の授業や文化祭...といったものは無く、女装しているが故の危険なイベントも存在しない。
前作の男性が女性の中でどう過ごすか?」「男性であることがバレそうな危険なイベントはどう乗り切るのか?を上手かつ恥ずかしくリアルに描いていたあたりに好感を持っていたので、このあたりは残念なポイント。
今作ではせいぜい顔立ちなどが女性らしいと褒められて、心の中でげんなりするシーンが度々あるくらい。

逆に、化粧についてレクチャーする場面があったのは続編らしい描写。このように女装に馴れてしまっていることが活かされる描写は殆ど無いですがね...。

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続編ということもあるが、修史としても再度のお嬢様学校への潜入任務で、前回のことを思い出す場面も多々。関わった生徒の名前も出てくるので、前作をプレイしているとより楽しめる。紅茶についてスパルタ教育受けたよね~(笑)みたいな感じで。
ただ、家庭用機だと PS2 / PSP でしかプレイ出来ないのが難点。一応、PC向けにリブート版が出るらしいですよ。

 

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システム

周回プレイがとてもやりやすい作りになっている。

様々な作品に搭載されているフローチャートが本作にも存在するのだが、本作ではフローチャート上で選択肢を選ぶことができる。つまり、いちいち既読スキップをして選択肢の出現まで待たなくてもよいのだ。

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▲チャート上でどちらのルートにするかをすぐに選べる!

また、左上にはそのシーンのあらすじが書いてあり、何が起きての選択かを復習することもできる。のだが、そのあらすじがの文字が小さすぎてサッパリ読めない。(試しに画像を拡大してみてください...)
フルキス』のレビューにも書きましたが、このような視認性に難のある箇所について、本当に誰一人問題だと思わないのでしょうか?
フォントサイズの変更、ウィンドウの濃度変更など対策は出来るはず。デバッグ会社のチェックも通っている上でこのような問題が放置されているのは、ゲーム会社に勤めていた身としてありえないと言いたい。デバッグは最終的には実機で行うものだが、全員 PS Vita でやっているのでしょうか?それとも60インチとかの巨大モニタを使っているのでしょうか?

本作のシステムでとても良かったのは、四角ボタンでメニューを開けるところ。
PS4 の DUALSHOCK4 にはオプションボタンがついているせいで、メニューはオプション、四角はオートモード開始などになっている場合が多いが、本作は PS2 時代に慣れ親しんだ四角ボタンでのメニュー開閉。
伝わるかたは少ないと思いますが、これには正直感動した...。昔ながらの操作感で遊べるのは素晴らしい。

 

ゲームとして

残念ながら、近年とても多くなっている「ヒロイン指名制」。

「ヒロイン指名制」とは私が勝手に定義しているもので、【選択肢が全てヒロインの名前になっており、選ぶ楽しみが存在しないものを指します。

今作は「執務室」を選べば莉里、「温室」を選べば真愛にポイントが入る仕組みで、事実上「ヒロイン指名制」となっている。また、それらを選んだ後にもう1つ質問が来ることは稀

前作はレビューにも書いた通り、基本はヒロインを指名するのだがその後の選択肢を間違えていると、たとえ目当てのヒロインを選び続けてもバッドエンドになるという、ゲームとして楽しめる出来になっていたのですが、本作はそうではありませんでした

本作のPC版発売は2016年なので、時代の流れには逆らえなかった、といったところでしょうか。

ゲーム中「あまり片方に入れ込みすぎると、(会長候補として)相手に嘗められるぞ」と注意されるが、そんなことは全く無い。言ったのなら、片方を選び続けると負けるような結末を用意してくれ。その点煙草を吸いすぎるとゲームオーバーになる神宮寺三郎さんは素敵。

 

テキストの問題点→開発の問題点!?

文字がはみ出す、人名の取り違え、スクリプトのミスからか起きている二重記述、誤変換が1つずつ、計4箇所。PC版にもあった問題かはわかりませんが、こんなにあるのは珍しい。ただ、少なくとも文字のはみ出しは Switch の体験版では修正されています(後述)。

そして、音声ミスが2箇所。そのうちの1箇所を比較します。
こちらの動画を再生してみてください。

そう、PS4 では製品版も体験版もこのミスが放置されているのだが、 Switch では体験版の時点でこれが修正されています。
テキストを見ていただくとわかるかと思いますが、 Switch のものはフォントがやや太くなっており、視認性が向上しています。前掲のチャートの画面も、多少文字が読みやすくなっています。この音声ミスは、フォントの調整などでデータを弄っている最中に修正されたものと思われます。

そもそも本作は当初 PS4 / PS Vita での発売が告知されていたが、後から Switch でも配信すると発表された作品。事情はわかりませんが、マスターアップの時期が違うのでしょう。一般的に体験版は製品が出来上がってから作るものなので、完成時期が違えばこのような差異があってもおかしくはない。

おかしくはないが、 Switch の方で気付いたら PS 版も直すべきでしょう。PS 版には既にパッチも配信されているのにこの修正が含まれていないとは。デバッグ会社も気付いてほしい。前述のテキストが読めない問題はギリギリ「仕様」で返されるかもしれないがこれは明確に「バグ」扱いで報告すべき案件よ。

「家庭用版は誤字脱字が酷いからやるならPC版がいいよ」となってしまうと、ただでさえ売れていない家庭用ゲーム機向けADV市場に更にダメージが入る。しかも今最も活発に移植しているエンターグラム社の作品に起因する、となると影響は計り知れない。
何があろうと私は買い続けますが、品質管理は徹底していただきたい。

 

あと BGM の音量にも問題がある。特定のタイミングで音量が急に上がるバグがある。

 

嬉しいファンサービス

修史の携帯電話に使われている画像が、前作の舞台になったセント・テレジア学院。こういう繋がりがあるのは嬉しい。加えて「あのキャラ」も登場するぞ!

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総評

前作『恋する乙女と守護の楯』は、女性に免疫の無い男性が女装で潜入し、危機に晒される護衛対象を護るうちに恋心が芽生える内容だった。また、学生生活において男性であること特有の問題なども描かれており、女装モノに求めていたものが描かれていた

対して本作は、学校的・学生的イベントは描かれておらず選挙戦一本。決して退屈はしない日常描写だが、楯として傍にいるうち恋に落ちたというよりは、一緒に行動してきて恋に気付くという一般的な恋愛ADVに落ち着いてしまっていた

眞木莉里ルートである男装の麗人×女装の組み合わせは女装に価値があったが、他のルートでは女装=アーマーのような扱いになっておりいまひとつ。

これが最後の女装任務だと上司に迫り念書まで書かせたものの、どうやらそこには抜け道があるように見せつつその内容は全く語られないといった残念なポイントもある。

重ねて述べるが、日常描写は決して悪くない。過去の経験上、本当に悪いものは欠伸が出たり未読スキップまでするが、本作の日常は楽しい部類に入る。だがその日常に学校らしさなどが欠如しているため、手放しには褒められない。

悪い物語ではないのだが、前作の仕上がりや女装という特殊性から来る物語を考えてしまうと、良いとは言えない内容であった。

余談だが、家庭用版でもヒロインは全員18歳以上と仮定すると、前作の護衛対象は最低でも18歳~20歳で、修史は20歳の子より年上と話しているので若くて21歳。
3年後の本作は一番若くて24歳で、身長が4cm伸びたと言っていたので167cm。続編はそろそろきついだろうか...(笑)

 

恋する乙女と守護の楯~薔薇の聖母~ 通常版 - PS4 恋する乙女と守護の楯~薔薇の聖母~ 通常版 - PSVita

 

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(C) AIGIS / ENTERGRAM

 

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