アドベンチャーゲームの入江

アドベンチャーゲーム(ADV)を600本以上持つ筆者が、元ゲームプランナーの視点からADVを紹介するブログ。ギャルゲーからミステリまでADVならなんでも。

【ADVコラム】アドベンチャーゲームを「ゲーム」にするには

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本ブログは「元ゲームプランナーの視点からADVを紹介する」と銘打っており、元々持ち合わせているゲーム論に、会社でゲーム開発に携わった経験から来る論も交えてレビューをしています。

それはどんなものか?例えばこちらの記事には↓

「ゲームとして遊べるか、楽しいか」が最重要ポイント。
→頭を使ったり、観察力が求められたりするものは高評価になります。
 逆に、「選択肢がヒロイン名指し」等はゲーム性が無いので基本的に評価が低いです。

とあります。これが私の基本的な軸であり、ゲームに対する論です。
今回はこれを詳しく紹介します。

わたしの思う、アドベンチャーゲームのいいところ! という記事のリライトです。

 

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「ゲーム」とは何か

そもそも「ゲーム」とは何か。
誰かが明確に定義したわけでも、普遍的な考えがあるわけでもない。

私はゲームを「双方向性のあるもので、思考と試行を重ねて結末を選び取る」ものと考えています。

順を追って解説します。
まず、我々にはボタン入力の出来る機器が与えられています。そしてその入力により、ゲーム画面から反応が返ってきます。その反応に対して次はどんな操作を行うかを考え、再びゲームを動かします。
その繰り返しの中で失敗をしてしまった。再挑戦の際には、失敗の原因を振り返り、こうしたら良かったのでは?と別の道を選んで挑みます。
このサイクルを何度も何度も繰り返し、結末を目指す―――それが「ゲーム」だと思っています。サイクルの例を図示すると以下のようになります。

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図の2番から3番で「落下すると失敗になる谷を、 上手く飛び越えて」います。これが「成功体験」であり、体験を上手に積み重ねられるかが、プレイヤーの心情に大きな影響を与えます。もっと言うと、「自分で考えたやり方がうまくハマって突破出来た」時に格段の「喜び」「嬉しさ」を感じます。「理不尽に難易度が高すぎる」ようなゲームが良い心証にならないのは、これらの要素が伝わらないからなのです。※難易度が高いことが受けているようなゲームは除いて。

ここまでで、「ゲーム」とは
ゲームの反応を受けたプレイヤーが思考・実行し、それを受けたゲームが次のお題をプレイヤーに与え、プレイヤーは再度考え...
を繰り返すものと考えていることが、おわかりいただけたかと思います。

 

アドベンチャーゲームにあてはめてみよう

では、この「ゲーム」論をアドベンチャーゲーム(ADV)にあてはめてみます。
ここでは一般的なテキストADV(ビジュアルノベル)に焦点を当てて考えます。

ADVの構造

ADVは基本的に、テキストを読み進め、時折現れる選択肢を選んでエンディングに辿り着くというもの。
極端に簡単に表すとこうなります。

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ここで重要になるのは、分岐が行われる「Q」の部分。
「Q」では選択肢が提示されますが、その内容について、どちらがよりこの記事で話題にしている「ゲーム」として良いものでしょうか?

Q.放課後、誰と一緒に帰ろうかな?

・Aちゃん
・B先輩
・Cさん

 

Q.みんなとカフェに来たけど、何を注文しよう?

・いちごパフェ
・パウンドケーキ
・特製クレープ

答えは後者の例です。

まず前者の選択肢は、対象となる人物の名前がダイレクトに表示されているため、目的の子(=攻略したい子)の名前を選ぶだけでいい。そこに「考える余地」は存在していません。

後者の場合、「どれを選べば目当ての子のポイントになるだろう?」「これはあの子が好きそうだよなあ」などと「考えて」から選択するはずです。このような問いにすることで思考の余地が生まれます。

ADVも、アクションやRPGのように短いサイクルでは出来なくても、しっかり「ゲーム」としての特性を活かした作品になることが出来るのです。

上掲の図を発展させ、「ゲーム」として良いADVの例を挙げるとこうなります。

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まず、分岐までに複数の考えさせる選択肢を設けます。
もしこれが少なかった場合を、『スーパーマリオブラザーズ』で考えてみてください。1つのコースに穴が1つ、クリボーが並んで出てくるのが1箇所だけ...というのは、いくらなんでも物足りないですよね?

そして分岐後にはグッドエンド(成功)・バッドエンド(失敗)を設けます。A・Bのように選択肢で間違ってしまうと一発でバッドに行くも良し、Cのように最後の最後でグッドのルートから落とすも良し。とにかく、分岐をゴールにはさせず、最後までプレイヤーに考えてもらうのです。
再びマリオを例に挙げますが、分岐後に何もないADVは途中から地面だけが続くマリオのコースと同じです。何もない・盛り上がらない・退屈なものですね。

◯ヒロインを直接指名する選択肢ではなく、ワンクッション「考えて」もらって選ばせるものにする。
◯それを複数設け、ゲームとしての展開に変化を作る。

◯最後まで物語の展開に注意を払わせ、失敗する結末を回避して最高のエンドを掴み取る形にする。

これだけで「ゲーム」として面白いADVが出来るはず。いくつもの危険な選択を乗り越えて辿り着くグッドエンドは、何物にも代えがたい快感になります。

 

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具体的にどんな作品が良いの?

『Memories Off -Innocent Fille-』をプレイしてみてください。

ヒロイン名を選択するだけの選択肢は殆ど存在せず、その選択をすることによって対象の子とどう関わるかが少しずつ変化してゆく作品になっています。
また、明確に人物を選択させる場面では R.A.I.N.s と呼ばれる時限つきの選択肢に変化し、その選択の結果は「単に選んだ」のではなく「選ばなかった方を見捨てる」という意味合いを持っています。「どちらを見捨てるか?」はこの作品で重要なポイントとなっています。

更に、フラグが足りない状態で真相が明かされるルートに入ろうとすると、その先に進むための何かが匂わされた上でバッドエンドになってしまい、それに必要なフラグを求め・よく考えて再度ゲームに挑むことにもなります。(感情の誘導としても◎)

近年家庭用ゲーム機向けに発売された作品の中では、「ゲーム」としてとても楽しめるものとなっています。

 

選ばせるときのプラスアルファ

考えて選択させるのが良いと言いましたが、その考えさせる根拠に「それまで提示されてきた情報」が入っているとなお良いものになります。

先程例示したこの選択肢。

Q.みんなとカフェに来たけど、何を注文しよう?

・いちごパフェ
・パウンドケーキ
・特製クレープ

これを選ぶ時、各々の好物の話がそれ以前の会話の中で登場していた場合、そのことを思い出して選びますよね?

ADVはRPGのように後半に行くにつれ敵が強くなったり、ACTやSTGのように要求される操作のレベルが上がったりすることが出来ません。では、そのような「ゲームの中の面白さ」をどのように変化させるかは、これがポイントになります。

ゲームの序盤と終盤では、キャラクターや世界観への理解度が異なります。序盤は我々プレイヤーにとっては出会ったばかりの人間で相手のことがよくわかりませんが、進めるにつれ徐々にどんな人なのかを理解することが出来ます。
「あの時こんなことを言っていたな...」「あそこでこんな描写があったな...」といったデータを頭の中で蓄積させてゆき、選択が提示された際に考える論拠とする。そしてそこから、「あのキャラはこういう対応を嫌うはず」「ここでこう言ってあげれば考え直してくれるはず」という答えを導いて選択する。

後半になればこの「積み重ね」が大きくなり、より多くの要素を吟味しないといけなくなる。ADVはこうやってゲームプレイの面白さを変化させていくのです。

ここまで出来ていると、「ゲーム」としてより面白い作品になるはずです。

文中の情報を上手に論拠としている傑作に『シンソウノイズ』があります。本作は作品全体を通しての「積み重ね」が素晴らしく、まさに「アドベンチャーゲーム」と呼べる一品となっています。

 

これが出来ていると

以前の記事で『自らの手で世界を変えて未来を掴み取ることが面白い!』と書きましたが、ここまでの要素が満たされて初めて発現する面白さがコレです

ゲーム側から提示される選択を自身の手で選び、物語の世界を大きく分岐させて結末に辿り着く。"「ゲーム」として良い"ADVでしか出来ない体験ですし、他のジャンルの作品では決して味わうことの出来ない、まさにADVのいいところなのです。

他ジャンルのゲームでは出来ないとはどういうことなのか?
それを述べるため、RPG(とストーリーを持つ一般的なゲーム)とADVのゲーム展開を比較してみます。

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左がRPG、右がこれまで見てきたADVの図です。

恐らく、RPGのほうが自由度が高いよ!見える世界は全然違うよ!と思われる方が多いかもしれません。RPGには様々なプレイスタイルが存在するので、クリアに至るまで様々な道があります。それに比べ、ADVは選べる箇所が決まっていますから。

しかし、比較すべきはそこではないのです。RPGは「決められた結末への道筋が人によって異な」り、ADVは「道筋の違いが結末を変えて」いるのです。前者はどんなプレイスタイルを取ったとしても、倒すボス・仲間になるキャラ・起きるイベント・結末は同じになります。後者はそれと違い、プレイヤーの考えの違いによって発生するイベント・出てくるキャラクター・結末が変化します。簡単に言うと、物語それ自体が分岐するか否かということです。

どちらが優れている・劣っているではなく、どちらにも良いところはあります。それでいて、『ゲーム側から提示される選択を自身の手で選び、物語の世界を大きく分岐させて結末に辿り着く』体験はADVでしか出来ない特殊なものなのです。それが私がADVを好きな理由なんです。

 

これが出来ていないと?

「一本道でゲーム性が無い」「ヒロイン指名制でゲーム性が低い」と私にレビューされます。更に、そもそも選択肢という概念が存在していないゲームには「ただの音の出る絵本」という評価をします。殆ど考える必要が無かったものの面白いと感じた『絆きらめく恋いろは』や『アメイジング・グレイス』は本当に稀有な存在なのです。

個人の評価は置いておき、プレイヤーに思考と試行の余地が無いと基本的に退屈なゲームプレイになってしまいます。そこに「ゲーム」としての良さが全く存在しないのだから。ゲームの進行に幅も高低差も何も無く、ただただ物語が進むのを何時間も眺めるだけの作品は、退屈という他ありません。ゲームという娯楽でうんざりした感情を味わってしまうのは、存在として致命的です。

 

まとめ

自身の「ゲーム」に対する考えから、どのような構造を持つアドベンチャーゲームが面白く、そして良いものなのかを述べてきました。そしてそれが他のジャンルでは体験出来ない独特の面白さであることも説明してきました。

大事なのは、「双方向性」を利用し「思考・試行」をさせ成功体験を「選び・掴み取ら」せること。正直、これが出来ていないアドベンチャーゲームは「ゲーム」とは言いたくないですし、近年 PC から移植される作品はこれに当てはまってしまうものが本当に多い。シナリオの魅せ方や世界観設定、伏線回収力が素晴らしく心惹かれる事は本当に稀なので、各社には「ゲーム」性とアドベンチャーゲームの特徴を遺憾なく発揮した作品づくりを思い出してほしい。

 

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